英名は、レターウッド・スネークウッド、イギリスの商業名です。ドイツはタイガーホルツ、メキシコはハスタ、ベネズエラはパロド・オレ、ガイアナはレオパード・ウッド、ブラジルはゴメレイラ・ポレタと呼ばれています。この木の不規則な黒色の斑(まだら)状の模様が、文字に似ている為、レター・ウッドと名付けられています。その他、独特の杢目模様により、タイガーウッド、パンサーウッドとも呼ばれます。

スネークウッド・蛇紋木(じゃもんぼく)について

材の分布

スネークウッドは、以下の2地域があります。

  • ①メキシコ南部・グアテマラ・イギリス領・ホンジラス・南パナマの北地域(中央アメリカ)・大西洋側
  • ②南米では、大西洋側(イギリス領ギアナ・ガイアナ)・スリナム(フランス領ギアナ)・ブラジル(アマパ)・ブラジルアマゾン河パラ州(北側)。特に国境に接する国々、ギアナ高地の内側に分布が多いと言われています。

材の色彩

ラカッポでは、大量にはこの材を扱った事がありませんが、この木も産地国の地域差があり、オレンジ系の強い材と黒色が強い材の2種類があります。今ではベネゼイラがら北ユカタン半島産の方がオレンジ系が産出されると言われています。現在日本には、ガイアナを中心に少量ずつ輸入されています。扱っている方は、千葉に1社、東京に1社、兵庫に1社と扱っている店は少ないと聞いています。

写真①は、地域により産出する色の違いです。

地域により産出する色の違い

写真①:地域により産出する色の違い

A:黒系の材質・色彩

南米を主に産する材に多いと言われています。

B:オレンジ系の材質・色彩

ユカタン・中米から産する材に多いと言われています。

スネークウッド材の概要

樹高は15m~20m・径は15cm~25cmが平均アベレージで、30cmを越えるのは、現在では稀(まれ)と言われています。クワ科の中型樹で、根に板根(ばんこん)と言われる板状の根が付きます。外皮はグレーコーヒー色、内皮は黄色で、・黄肌材によく似ています。芯材は、深いマホガニーレッドです。どこを製材しても蛇柄の大小はありますが、全部にこの杢目は現れます。言い換えると、木全体がマーブル状の捻り飴棒(アメンボウ)で、金太郎飴のごとく、どこを切っても蛇柄が現れる材ですが、材は堅く硬質で、締った材なので、中から生じる割れ・干割れが多い木と言えます。

杢目柄は蛇・豹に似ているか?

スネークウッドの杢目柄は蛇・豹に似ているか?

写真②

スネークウッドの杢目柄は蛇・豹に似ているか?

写真③

実際に動物・爬虫類(はちゅうるい)図鑑を開いて見ると、本当にこの材から得られる杢目柄は、虎を始め蛇類に似た種があります。特に蛇類ではなく、トカゲ類にこの材に似た杢目柄が多くあります。

しかし、英名のレターウッドの呼び名の元、象形(しょうけい)文字・古代文字・楔(くさび)型文字もよく見ましたが、とても似ているとは思いません。やはり動物柄・蛇柄が似ていると思います。これは人種・国民性の違いかもしれません。木材の表現は、多様性があります(例:黒檀黒柿の例に取っても、日本人は木に対しての表現は豊かです)。

スネークウッドの杢目を深く見る

写真④は、①~④まで、あえてランク別に並べています。

ランク別スネークウッドの杢目

写真④:ランク別スネークウッドの杢目

  • ①は、材の中央部(芯部)で杢がわずかです。
  • ②は、胡麻のような杢目が入り込みます。
  • ③は、パンサー・ヒョウ柄があります。
  • ④は、蛇紋柄です。

ステッキとしてのスネークウッド

写真④のように杢目柄により、大曲ステッキ(うまく曲ったとして)①~④までのランク別価格帯になります。

もちろんステッキ全般にも同じ事が言えるのですが、たとえ①のクラスでも、ステッキは丸く最終仕上げをしますので、そこそこの杢目が映るステッキになります。④のクラスでも、曲げた部分に大きな傷(補修している)がある物は、杢よりもランク下になります。このランク上の問題が価格に直接跳ね返ってくるので、来社した御客様は、真剣に悩む所でもあります。7桁の値段か?それ以下か?これは大きい事です。

スネークウッドの素材・原板

写真⑤:スネークウッドの素材・原板

写真⑤は、スネークウッドの素材・原板です。写真を拡大して見て下さいませ。写真⑥は、見事に曲ったスネークウッドの大曲りステッキ品です。細い物は、セパレート型用のシャフト材です。出来上がり品は、杢が良く現れた品です。こちらも写真を拡大して見て下さいませ。

見事に曲ったスネークウッドの大曲りステッキ品

写真⑥:見事に曲ったスネークウッドの大曲りステッキ品

ラカッポは、曲げられた品を約1年、空調が入った部屋で様子を見ます。補修した所がめくり上がったり、一部が返し剥れ(はがれ)が生じますと、手で触らないと、分らない傷・段差が生じる事がある為です。基本は木地のまま1年はみる。この事はステッキにとって必要です。

スネークウッドのステッキについては、以下のページでもご紹介しています。

スネークウッドのステッキ

よくある質問と回答

Q:なぜスネークウッドのステッキは高いんですか?

A:まず外部要因をお話しします。各産地では2mを中心に少量しか出荷されておらず、特に南米・英国・フランス領のギアナは安全性が高いのですが、その他の地域は、政治的に不安定さが著しく、危険すらあり、輸入業者も現地まで行き買付まですると言う業者は少ないと聞きます。

A:内部事情をお話しします。まず原木は、3m・4mで日本に輸入されません。木の元の板根(ばんこん)部分を取り除き、現地で玉切り(長さ切り)2m材を中心に長さを揃え、外皮をハツリ剥がされ(はがされ)、急場で日差しから割れを防ぐ為、簡単な割れ止め材(パラフィン蝋)で、一時的な養生のまま、船便でパナマ運河を”赤道を越えて”日本に入荷します。つまり、現地で木乾燥材の為、日差しで割れ、赤道越え時、船底・室内温度50℃以上に晒されて来る訳です。日本で製材して、原木を挽く時すでに干割れ等が入っていて、なかなか良材のステッキ用原板が取れません。

Q:ステッキ曲げ加工時の苦労はありますか?

A:製材後、乾燥している間に細かい干割れが生じます。最低でも3年はゆっくり乾燥されなければなりません。大曲り加工時(曲げる部分約35cm)を蒸し釜で1~2時間蒸気を当て、熱した軸器に押し当てながら曲げます。

特にこの材は、熱を加えた時、ピシーッと裂けるケースが多い材なので、曲げる時、曲げ部分に針金を巻き付ける事もあります。前に述べましたが、この材はビールのおつまみの”裂けるチーズ(ストリングチーズ)”を捻った物とお考え下さい。ボコーテ材と共にスネークウッドは、曲げ加工は最難度と言えます。

Q:スネークウッドの原価計算内訳について教えていただけますか?

A:スネークウッドは、重さで仕入れます。現在の仕入れ価格は、輸入元にもよりますが、1kg約2万円~3万円です。仮に2mの径25cmの材は、乾燥していない重さも入れて、約25kg~30kgです。そうすると、1本良材として50万円~80万円します。

仮に1本の丸太からステッキ用原板が1m×3cmですと、角材は5~6本しか取れません。買った時点で、割れ・傷・製材費・乾燥代を入れると約40%を上乗せしないと元値が上がりません。そうすると上手く曲った仕上り品は、一本あたりの原価は40万円~80万円は付く訳です。

この中で写真④のように杢目により、価格のランクが更に決まります。1本200万円~300万円のスネークウッドのステッキがあると聞きますが、それは流通の事を加味しても、1本100万円前後が、このスネークウッドの価格とラカッポは考えます。

Q:スネークウッドのステッキを買い求める時の留意点はありますか?

A:以下の2点があります。

  • ①スネークウッドの材質で説明した通り、元々この材の持つ欠点の数々があります。細かい裂けや傷等は、全てバックアップ剤(補強液)を使いながらの製作は、正直言って当たり前です。なるべく木地材を見て御客様が判断される事を強く望みます。

    材を素手で曲りから下方に向って触ると、材の凹凸がある物は、傷や直しの多い材なので、注意して見られた方がよいと思います。

  • ②憧れやステータスシンボルなど、スネークウッドを取り巻く魅力を片寄って見ない事が大切です。一般のステッキと比べ、実際重厚で重みがあり、通常のステッキ材の倍近い重さがあります。ステッキ材としては重さ等除けばさすがステッキ界の”雄”であり、材の持つ杢目の魅力は尽きません。
Q:スネークウッドでエピソードは何かありませんか?

A:まさか今までこのようなステッキ業者はいないと思いますが、実際にあったお話しです。2年くらい前に、40代の男性の御客様がご来店しまして、スネークウッドの変わった三味線胴のステッキをお持ちでした。ウレタンを落として、父親から形見として頂いた物なので、長さをカットして牛角を石突きに付けて欲しいとご依頼がありました。

長さをカットして、ウレタン塗装を落とし、全体をNo.400のサンダーを掛け始めたら、綺麗に出ていた杢目の一部が消え始めました。結論ですが、虎目の部分を塩酸等細いワイヤブラシで杢柄を造り、漆墨で杢目柄を新たに加えた物だった事が判明した事件がありました。本内容については、黒柿の仮作(げさく)で説明しています。

Q:他にスネークウッドでエピソードは何かありませんか?
シャーロック・ホームズ

写真⑦:シャーロック・ホームズ

A:映画です。19世紀後半イギリスの小説家アーサ・コナン・ドイルの創作探偵物語、皆様も知っている「シャーロック・ホームズ」です。この映画の中に出てくる相棒ワトソンが持っているステッキは第1次アフガン戦争に、軍医として従軍負傷した事により、ビクトリア女王から頂いたスネークウッド造りの仕込みステッキです。和訳では蛇紋木(じゃもんぎ)・英文DVDの中では、スネークウッドと言っています。1814年すでに英領ギアナが植民地になっており、100年の間にもの珍しい杢目として、目敏い(めざとい)イギリス人ですから、既に巷(ちまた)では、出回っていたのかも知れません。こういう歴史事実の積み重ね”事実は正に小説(推理小説)より奇なり”ですね。

スネークウッド・蛇紋木(じゃもんぼく)のご紹介は以上です。続いて栓(せん)をご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

木族の会(樹種辞典)