柿の丸太を製材時、黒目の杢目が表れます。この縞状の杢目を黒柿目(くろかきめ)と呼びます。杢目模様は、千差万別杢目によりランク付けをします。一般に材を10年程度乾燥した上で、更に白黒のバランスや杢目の良さを最大限引き出すため、杢目の流れを切らずにステッキ材1m20cm~1m50cm、33mm角に木取りし、角材で曲げてから丸加工し、仕立て上げます。
この工程で10本あれば2~3本が熱処理時や材の持つ性質により、欠けたり割れたりと、また曲げられないケースもあり、ロス材が多く出て、ステッキ界では、スネークウッドと並び、最も難度が高い樹種です。
黒柿(くろがき)・柿の木(かきのき)について
ステッキ
- ①黒柿の純白の所だけで曲げた貴重材。
- ②赤線で示すように杢目の流れを切らずに必ず木取りします。
- ③見事に曲げ仕上がった黒柿大曲りステッキ。人の心を引き付ける杢目が出るかが勝負です。
ラカッポでは長さ1m20cmに表れる杢目をステッキの”小宇宙”と呼んでいます。
写真A:白柿(しろがき)、黒柿(真黒:まぐろ)のステッキ
①は、白柿(しろがき)に漆を掛けたシャフトです。柿の果肉に見られる胡麻状の面白い杢目が浮き上がって見えます。
②は、白柿(しろがき)です(参考価格:120万円)。
③は、黒柿(真黒:まぐろ)のステッキです。これもめったに取れない商品です(参考価格:120万円)。
厳選した黒柿の良質材から曲げ加工に至るまで、20年近くで完品は20本しか製品になりません。
大曲り加工も超難易度が高い樹木の1つです。写真Cは、製品にならなかった黒柿材です。
厳選した黒柿の良質材より製作されたセパレートタイプのハンドル材です。ハンドル材1つでも5万円以上します。
見事に曲がった大曲り・中曲り・黒柿ステッキです。白柿・黒柿(真黒:まぐろ)を中心に、黒柿の総揃い踏みです。
参考価格
参考価格は、税込本80万円~120万円です。
黒柿の杢目は、どことなく渋派手で、日本人の美の感性にピタリとはまります。
杢目模様は千差万別。杢目の良材がベースです。ステッキ材に始まり黒柿は、用途にあわせて使用できる素材です。
原産地
柿の原産地は、東アジア圏の固有種といわれ、中国、朝鮮半島、日本に自生しているといわれています。原種は、中国長江流域といわれ、世界のカキノキ科・カキ属は約500種を数え熱帯、亜熱帯に多く分布しているといわれています。東南アジアでは黒檀(コクタン)が有名です。
19世紀すでに果実種としては、中国、日本からヨーロッパ、アメリカへ既に伝えられていました。果実の生産量は、現在中国がトップでスペイン、日本と続きます。有史以来より、アメリカに自生していたアメリカンパーシモン(ゴルフクラブのウッドに使用)と呼ばれる種は、日本の柿に近い物です。日本の柿は平安時代すでに記述に出始めていましたが、本格的栽培が始まったのは明治からで意外でした。栽培種は、富有、次郎、市田柿と数えたらキリがありません。植物学者ではありませんので、黒柿についてQ&Aでまとめてみたいと思います。
よくある質問と回答
A:銘木と評価出来るのは、用材としての寸法取りから言って、直径35cm以上が基本です。そこから得られる巾は、柾目挽きで90mm巾、板目挽きで210mmの材が取れるからです。生育環境により異なりますが、樹齢100年以上の木となります。
A:何本も柿の木を伐採しても、ほとんど木口断面は白灰色の木がほとんどです。右側2本の木のように、業界では日本の国旗に比べ”日ノ丸”と称して経済利用に程遠い木で、ほとんどが白が多くために黒い筋目があるくらいでは話になりません。左の2本は、そこそこの利用価値が高い木と言えます。②の写真のような丸太(バームクーヘンのように黒、白が模様状の丸太)が最高です。
A:原木(げんぼく)の説明にあったように、柿丸太(日の丸:黒目が日本の国旗のように中央部分にある材を例えて言います。)は、実際に製材しますと、写真のように黒目が少なくほとんどが白材という板しか取れません。
非常に価値の低い杢目、材で市場に出品されても誰の目にも向けられず、月日が経つと割れが走り何も使えない無価値の材に成り果てます。こういう柿材の出品を見ると、心が痛みます。
A:生育時の地中の土壌の成分タンニン、鉄分の関係と解説される方が多いですが、未だに植物学者ではっきりとした学説すらありません。現在分かってきたのは、動物等の食物連鎖と種の自身の引き継ぐ為、木自身がタンニンを作る植物であるとしか言えません。
A:最高杢筆頭に挙げられるのは、孔雀(くじゃく)杢です(写真①参照)。孔雀の羽根のように緑色の細かい杢目が表れた材から、写真②のように、網目(あみめ)、縞目(しまめ)杢が続きます。特殊な白材のみ、純白も貴重材です。製作する品により白目(しろめ)、黒目(くろめ)を上手く使い分けたり、杢目を最大限に引き出す技術とセンスが大切です。
A:今までの経験から言いますと、京都以西では、兵庫、島根、鳥取、岡山、広島。東日本では、埼玉、山梨、群馬、新潟、福島、山形に良い材が出たケースが多いです。特に山間部で黒木と言われている柿の木が良いと思います。
A:何万本に1本は少しオーバーですが、千本単位に1本と言われるのはある意味事実です。銘木市場に入荷してくる丸太は、日ノ丸材や真白材などでもともと価値の低い材は、入ってきません。荷主さんは価値の高い木、何本も切った中から持ってくる訳ですから、分母数は相当全国で切られているので、そういう意味で言えば何千本に1本となります。
A:濡れた状態の丸太を挽くと緑色が多くある材に出くわしますが、乾燥した材では当時あった緑は経年変化により必ず消えます。消えずに残った材も削り加工時に消えます。もし消えないのであるならば、奈良正倉院御物の黒柿厨子(ずし)の材もあれだけの良材の杢目なので、当然緑の孔雀杢が残っている訳ですが、現状残っていません。
銘木業界も悪いのですが、塗装前にエアブラシでサクロンを使ったり、杢目を手で修正したりした時代も過去ありました。木に携わる者として反省しなくてはなりません。
A:今は生産されていませんが、床柱で柿の木が高価なので、本物と同じように白い木材に、特殊な筆を使い杢目を書き込んだ柱を人造黒柿床柱と呼びます。戦後からの高度経済成長期、建売住宅を中心に良く売れた材です。東京にも大阪にも四国にも、杢目書き名人がいて、腕をふるっていました。
写真①は、奈良正倉院御物の一作品です。今から1200年程前に製作されたという献物台で白いヒノキの板に当時の職人が、黒柿の孔雀杢(クジャクモク)を墨で丹念に描いた仮作品(仮作とは文化財表示の言葉)と思われます。
約長さ70センチメートル×巾30センチメートル×高さ10センチメートルです。笑えないですね。どれだけ苦労し筆を運んだんでしょうか?当時から黒柿の杢目に魅力を見出し、取り憑かれていたのでしょう。正に力作です。
写真②は、その時の黒柿床柱材の一部分です。20年保管していた黒柿柱を製材時、ノコを掛けたら、ある部分が突然杢が消えたのでビックリしました。よく見ると柱中央部分全てに杢が書き加えられていました。
1200年前の職人、現代の職人、時空を超えてどちらの職人も黒柿の杢目に取り憑かれた人達です。
A:写真①のように茶室数奇屋建築材として床柱(とこばしら)、落掛(おとしがけ)、床框(とこかまち)に細い丸太に特殊な加工法により、野趣や雅味ある表面を削り上げ、趣きを持たせる秘伝の仕上げ方があります(興味ある方は、お問合せください。)。
A:黒柿は建築用材に始まり、指物、茶道具類(棚板、茶杓)、小物では杯(さかずき)、箸(はし)などに使われます。黒柿の良材は、捨てるところがありません。ぜひ貴重材なので、大切に有効活用される事を願っています。
黒柿(くろがき)のご紹介は以上です。続いて桑(くわ)をご紹介いたします。
木族の会(樹種辞典)
ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。
ステッキ専門店【ラカッポ】について
ラカッポは、おしゃれなステッキ製作を手がけ国内外のお客様からご好評を得ている東京新木場のステッキ専門店です。株式会社山安によってプロデュースされています。ステッキのあらゆるオリジナルデザイン、意匠(銀細工・象牙彫刻・宝飾)に到るまでオーダーメイドによる製作を承ります。アンティークステッキ、思い出のステッキの手直しについても修理を承っております。
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ステッキ専門店ラカッポは、お客様のご要望をお伺いさせていただきながらフルオーダーメイドでステッキを製作、販売させていただいております。ご来店の際は、事前にご来店予約をお願いいたします。また、ご不明な点などございましたらお気軽にお問合せくださいませ。みなさまのご利用、お待ちしておます。