Aは栂材の中では非常に珍しい笹杢(ささもく)系の原板、Bは荒しい栂本来の柾取り材

写真①:「Aは栂材の中では非常に珍しい笹杢(ささもく)系の原板」、「Bは荒しい栂本来の柾取り材」

栂(つが・とが)は、マツ科の木です。福島県(安達太良山)を北限とし、日本の福島以南本州・四国・中国・九州の温帯林にモミ材と共に分布しています。標高1,500m~1,600m以上に栂と同様の葉が小さいコメ栂の樹林と棲み(すみ)分けしています。登山TV番組に登場する栂林の多くはコメ栂です。コメツガと共に樹高20m~30m・径は1mクラスの材も稀にある常緑高木です。

栂(つが・とが)について

産地

栂の代表的産地は、戦前と戦後で大きく変わります。戦前は静岡県天竜川・大井川上流(千頭:せんず、気田:けた)にある各営林署が主な出材地ですが、戦後からは熊本営林署の出材が多く、その後四国の高知営林署、本川村:本川ツガ・東津野村(不入山:ふいりやまつが)が特に有名で、関西圏を中心に消費されていました。

本州では赤石山系・中央・南アルプス・紀伊半島にも優良材が出材されました。最後に四国石鎚(いしずち)・倹山地からもかなりの材が出たと言われています。栂材は成長が遅く、70~80年で径30cm前後、300~400年で径1m以上の木は、なかなか育たないと言われ、植林には不向きの木と言われます。

用途

何と言っても建築材が主体で、柱角材・構造長材・特に内装・造作すべて栂材使用の栂普請(つがぶしん)は、関西地方、京都・大阪・兵庫・徳島・淡路島では数奇屋建築・高級邸宅材として今でも根強く需要があります。径1mを越す巾広材は、玄関敷台・テーブル材・琵琶棚板等、今でもヤニ松材と首位を競う程です。

高樹齢木に現れる”栂の蟹杢(かにもく:カニの甲羅模様)”が出ている材は、床柱など、特に珍重されます。変わった所では、樹皮からタンニンが取れ、漁網の染料にも使われます。

日本栂で、指物師による色紙箱(しきしばこ)です。一枚板から杢目を合わせをして、作った物です。既に30年は経っています。表面は拭き漆仕上りです。松系の指物は、超難度です。難度が高い理由は、肥(ヤニ)と鉋(カンナ)削りの刃跡が残る為、技術の差がはっきりと分かるからです。飴色の中に、雲が湧く様な杢目の中に、蟹杢(かにもく)がまるで浮いている様子です(色紙箱27cm×32cm×7.5cm:山安蔵)。

色紙箱27cm×32cm×7.5cm:山安蔵

色紙箱27cm×32cm×7.5cm:山安蔵

色紙箱27cm×32cm×7.5cm:山安蔵

色紙箱27cm×32cm×7.5cm:山安蔵

明治の価格

篠田レポート(インドローズウッドのページに篠田銘木商報の例があります)には、明治44年、千頭山(今の静岡県大井川・上流本川根)から出た6m×15cm角の芯去り材が1本18円とあります。

当時の物価は、公務員初任給55円、一般の会社の初任給40円、背広仕立一式が20円とあります。スーツ代一着とほぼ同じだった事が分かります。

写真②は、ステッキ用に挽いた材「B」直角に合わせても曲りがあり・杢目が切れている為です(拡大して見てくださいませ)。乾燥材で真直に杢を乗せるのは、難しい材です。

すき間が開いている(曲り)

写真②すき間が開いている(曲り)

米栂(べいつが:アメリカ栂)との違い

よく栂(つが)と言うと、関東の人にはその貴重性についてあまり理解されていません。米栂(べいつが)の少しランク上の材としか思ってないからです。今日の材木屋さんは、扱った事が有る業者が少ないと言います。

日本に輸入される栂(つが)は、米栂(べいつが)と言われ、ウエスタン・ヘムロックと言われています。アメリカ・アラスカ南部からオレゴン州にかけて分布している材で、最近の建て売り住宅・ハウスメーカーの家造りに使われている一般材の代名詞です。日本産の栂とは、まったく違います。

ステッキとしての栂(つが・とが)材

針葉樹では松(男松・ヤニ松)とこの栂材以外、大曲りステッキは、製作できません。栂も条件が上手く噛み合わないと曲がりません。また1m50cm×3cm丸の中に蟹杢(かにもく)を一直線に乗せる事は、神技と言われるぐらい難しい杢目柄です。

材の今後ですが、杉、桧は植林可能な木で、黒松・赤松も陽好樹なので植林も可能ですが、栂(つが・とが)は一度皆伐されると、栂の天然林となる蘇生林になるだけでも、かなりの年数(約100年)を必要とします。今までの産地は、戦後から次々に国立・国定公園に指定され、今後良材はますます少なくなる貴重な材と言えます。

写真③を拡大してご覧下さい。

「A:杢が綺麗に乗った大曲り品木地」、「B:2年経た拭き漆塗りの完成品。淡い飴色に変化しています。」

写真③:「A:杢が綺麗に乗った大曲り品木地」、「B:2年経た拭き漆塗りの完成品。淡い飴色に変化しています。」

杢が綺麗に乗った大曲り品木地

写真③拡大:杢が綺麗に乗った大曲り品木地

2年経た拭き漆塗りの完成品。淡い飴色に変化しています。

写真③拡大:2年経た拭き漆塗りの完成品。淡い飴色に変化しています。

以下は、国有林より出材された栂(つが・とが)の丸太です。

国有林より出材された栂(つが・とが)の丸太

写真④国有林より出材された栂(つが・とが)の丸太

国有林より出材された栂(つが・とが)の丸太

写真⑤国有林より出材された栂(つが・とが)の丸太

よくある質問と回答

Q:栂類で曲がらない木はありますか?

A:木族の会(樹種辞典)に後から載せますが杉・屋久杉・霧島杉等銘木杉、桧(ひのき)、落葉松(唐松)などが曲がりません。

屋久杉は以外でした。樹油脂が多く含まれているので、曲がると思ったのは大間違いです。厚み2mmの中に、沢山の歴史が詰まっているので、仕上中にもいろいろ傷が出て来る為です。この栂材も何本か失敗しましたが、かろうじて大曲りステッキに成りました。笹杢(ささもく)原板へも挑戦します。杢目を揃って入れる読み(よみ)・木取りが本当に難しいです。

栂(つが・とが)のご紹介は以上です。続いて柘植(つげ)をご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

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