白檀の分布は、アジア圏、インド、インドネシア、ミャンマー、南はオーストラリア、太平洋ミクロネシア圏、フィジー、ハワイを含む諸島に分布します。良材の産地は、昔からインドとされています。用途は、主に香木、オイル材料、仏像彫刻品、小物では、扇子骨、民芸品に至るまで、特殊な寺院、日本間の床柱、床框(とこかまち)に使われた作品例があります。

白檀(びゃくだん)、香木(こうぼく)について

白檀とことわざの関係

諺(ことわざ)に、”栴檀(せんだん)は、双葉より芳し”とあります。才能の秀でた人は、幼少の頃から才能の片鱗が現れているとの意味ですが、白檀=栴檀は間違いで、ケヤキ、ケンポナシに似た木材です。諺(ことわざ)から、学校、幼稚園など双葉・・・という校名は、この諺(ことわざ)より多く取っています。進学御三家の東京雙葉学園は、創立時所在地よりフタバアオイに校名が由来します。

産地

白檀の有名な産地はインド南部東西ガーツ山脈を挟むデカン高原地域です。特に有名なのは、西のマイソール地区カルナタカ州です。この一帯から、産出する白檀は東のマドラス港より輸出され、マイソール、マドラスと原木に刻印されています。

日本では、老山白檀とも言われ、その語源は中国語(年輪が積んだ木々が、山々に連なって生えている)の意味に使われます。

インド白檀は、インド全域に生息分布していると言っても過言ではありません。なにせ日本の面積の約9倍の広い国土ですから、白檀は栽培木植林木以外は、全面輸出伐採禁止となっています。

日本一の白檀

写真は当時(今もそうですが、これ程大きい白檀を見たことがありません)日本一と言われた白檀で、インド産です。

日本一と言われた白檀

日本一と言われた白檀

西新宿東京ガス”オゾン”パークタワーにて、題”日本人とすまい企画展”1999年1月9日~2月9日に出展した木材の中の1コマを撮影した写真です。3メートル×径約30センチメートル丸の見事な白檀です(本商品価格:1,300万円)。この企画展は、4回目にして一ヶ月の来場者数が18,000人を数えまして、この企画の集客力が一番と言われました。

企画前年度より打合せがあり、数寄屋柱20本、唐木柱30本、その他床柱20本の合計70本の出展でした。その他に、木挽の道具展示において、”木”を実際に挽いている実演までを当社が受けました。

もう1つのブースは、たまたま”目黒雅叙園”さんにおいて、旧日本亭の改修工事があり、取り外した貴重な南米(主にブラジル)の巨大な柱15本の出品もありました。ブラジリアンローズウッドの60センチメートル丸、幻材の出品です(写真中央)。雅叙園さんは、当時の建物は、東洋一の美術殿堂と謳われ、内装は著名な日本画家の作品が描かれ調度品や日本間等、豪華絢爛の料亭です。

写真中央:ブラジリアンローズウッドの60cm丸、幻材の出品

写真中央:ブラジリアンローズウッドの60cm丸、幻材の出品

この白檀の柱は、実は私の所有物ではありません。東京墨田区にある田島銘木工業(株)の所有品です。出展依頼をお願いするのに、何度も足を運んだのを覚えています。

白檀の価値

私も初めての柱なので、本当に1,300万円するのか興味を持ちまして、当時浅草にあった香木店に行ってお話しを聞きました。

今回の柱:3メートル×30センチメートル丸木 150Kg

香の計算式です。重さでの取引が昔よりされていて、その価(あたい)は、斤(きん)で1斤=500gの重さで取引されるそうです。

500g入の桐箱は、昔から20センチメートル×10センチメートル×7センチメートルと決まっているそうです。

ランク別形状

以下は、私のメモに残る当時のレート価格です。

  • A:切葉(きりは)、500g、18,000円
  • B:刻(きざみ)、500g、9,000円
  • C:分割(ぶわり)、500g、35,000円

150kgの丸太は、約300斤ありますので、1本分の香木として10,500,000円となります。

この出展された白檀は、香木、床柱扱いではなく、仏師の方が良値で買われたと聞きます。この材のもう1つの魅力は、たまたま木の中心部(芯)が片方にずれていた為、彫刻材用としては運が良かった事です。その理由は、以下の通りとなります。

直材の素直な木で、径寸がある物は滅多にありません。仏像を製作するにあたり、小径木ですと、像の頭頂部に芯がきてしまい、後の割れの事を考えると、なるべく広い面を持つ材が必要です。中、大の作品には、複木彫りが多くありますが、白檀は油分が多いため、経年変化を考えた時にこの方法は適しません。

開催の前年、暮れにかけて打合せが続き苦労したのを覚えています。

当時の打合せメモ、入場券、パンフレット

当時の打合せメモ、入場券、パンフレット

ステッキ

ステッキとしての白檀ですが、ラカッポでは原木、製品がありません。大曲りを製作するのに、1メートル50センチの長さが必要で、木質の良い物で真直な材はなかなかありません。

今2メートル10センチメートル×径8~10センチメートルの小丸太を持っている方がおり、交渉しているのですが、なかなかウンと言ってもらえません(材は古いお医者さんの床の間脇の袖柱に使っていた物)。白檀の大曲りステッキの完品がもしあれば、100万円以上はします。私事なのですが、私の父は94歳で他界しました。80歳の時、足が悪くなり、白檀の3本継ぎハンドル型(総彫品)を愛用していました。出棺時、三千世界に行った時、困ると思い棺に納めました。

ステッキに向く白檀の材は皆無です。たまに仏像彫刻材として、かつて輸入された材、長さ30センチメートル~50センチメートルは目にしますが、1メートル20センチメートル(ハンドル型)ですら、(曲がりが有る材が多く)取れません。業界では、もう一本有名な白檀がありました。昭和54年第23回全国銘木展示会が東京で催され、四国徳島の床柱業者が、白檀3メートル×12センチメートル丸(東ティモール産)が出品され、本代金450万円で都下小平市の銘木店が落札した記憶があります。

よくある質問と回答

Q:白檀は変わった植物と聞きますが?

A:種から発芽しますが、それからは半寄生植物(パラサイト)化します。近くに竹やヤシ類の背丈の高い草木に寄生しながら成長します。寄生相手は、その環境にあった植物なら何でも寄生します。現在インド、タイでは、種子から寄生まで人工管理育成が行なわれています。

Q:白檀の香りについて教えて下さい。

A:完全乾燥した白檀材には香りがありません。製材時や切削時材中から香りがあるぐらいです。基本的に香炉などで白檀片を炊く事により香りが発生します。皆さんが知っている白檀扇子、にほい袋、海外の仏像、民芸品には、加圧水蒸気、蒸留により取った白檀オイルが塗られているため白檀の香りがします。

私も当時、まったく知識が無く、人肌や材面を手の平で擦ると熱により香りが出ると思っていました。お恥ずかしい限りです。

白檀の丸太の香りは、約200年ぐらいで消えるそうです。白檀と比較される”香道会の雄”沈香(じんこう・キャラ)は、500年近くは持ち続け、香りに熟成さが増し変化するそうです(某香専門店主人の話より)。

Q:白檀にまつわるエピソードはありますか?

A:又聞きのお話しで申し訳ないのですが、インド独立の父、立役者のマハトマ・ガンジーのお話です。マハトマとは、”偉大なる魂”と言う意味があるそうです。1948年、惜しくもテロの銃弾に倒れ亡くなられました。ダビの時(火葬時)、インド各地の藩諸侯王(マハラジャ)が、その際決められた寸法の白檀(香木)と紅木(こうき:ダビの火力材)として持ち寄った材に火が起こり、紅木の煙は天まで上り、会場が白檀の香りに包まれたそうです。

この話は、30年前、戦前からインド綿を輸入していた貿易商の方から聞いた木場内(きばうち)のお話です。材木商の大店(おおだな)の主(あるじ)が亡くなると、その店の職方(木挽・川並)始め、親しくしていた同業者の中に、お通夜、焼香時、榧(かや)の粉、チップを革の袋に入れた物を持参し、はなけむる習慣が残っていました。私も何度か会場で甘い木の香りを嗅いだ事があります。どこか似ている感があります。

Q:火葬(ダビ)と白檀の関係の由来や歴史について教えていただけますか?

A:インドでは火葬(ダビ)の際、薪材の中にくべる香木(白檀)の枝材の量により、亡くなった方の生前のカースト・貧富の尺度とされた風習があると言われています。この伝統の風習がどこから来たか?と言うと、釈迦が臨終の際、釈迦の十大弟子の一人”阿難”に命じた”私の遺体を火葬のる時は「転輪王」”のとうに、白檀の棺桶に納め白檀やその他の香木を薪にせよ”ここから風習があり、マハトマ・ガンジーの火葬(ダビ)の話しに筋が通ります。

白檀の他、パータリの実・インド乳香(にゅうこう)、チョウジ、マッリカ等、古来より香を燃やす事により、供養する事が無量の功徳を得ると言われているからです。

Q:白檀の香りの代替材はありますか?

A:残念ですが”香木”として日本には、白檀に類する木材はありませんが、代替材の柏槙(びゃくしん)、カイヅカイブキ(ヒノキ科の園芸種)がありますが、伐採時香りを放ちますがその香りは、およそ白檀の足元にも及びません。前述の柏槙(びゃくしん)ですが、神奈川県鎌倉市鎌倉五山臨済宗建長寺があります。開山は、中国宗から来た(渡来僧)大覚禅師です。日本には柏槙(びゃくしん)がありませんので、白檀の香りに近い木を植えたと伝えられています。総山門より直線上にある仏殿左に双幹樹形の柏槙(びゃくしん)の古木がそびえ立っています。現管長吉田正道(しょうどう)老大師には、私も縁があり若い頃に(江東区に分院寒光寺)にて、何回か揮毫(きごう)を書いて頂きました。落款道号は栢樹(ひゃくじゅ)。この方は岐阜県の材木店が生家な事と、建長寺のシンボルである柏槙(びゃくしん)が山門境内において数ある樹木の中で一番という意味が込められています。

白檀(びゃくだん)のご紹介は以上です。続いてブビンガをご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

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