桐(キリ)は、キリ属・ゴマノハグサ科で、樹高15m~20m、径30cm~40cmが多いです。しかし時々日本でも径60cm~90cmクラスの出材もあります。桐は北海道、四国を除く日本全国に分布します。中国では青桐(あおぎり)・白桐(しろぎり)の2種が分布していて、白桐は日本種と同種と言われています。日本は移民・開拓の歴史でも有り、旧満州朝鮮半島に多くの植林事業(満州林業)を施策とした時期があります。また米国・南米への日本人移民の中で、日本から桐も含め、桜・柘などの多くが諸外国へ持ち込まれたと言います。また満州には、黒龍江一帯に、吉野杉・桜・柳・槐等あらゆる日本の木々が植えられたと言います。日本人にとって馴染み深い桐下駄・箪笥(たんす)・長持ち類を主に江戸時代より永く消費されていました。当然日本桐は、産地として東北・福島(会津桐)・岩手を中心に南部桐が明治の終わりまで、この時代を支えた栽培農家の存在がありました。第一次大戦後から、好経済下の中、中国からの白桐が不足を補いました。第二次世界大戦後から今日までは、国産の自給は15%程度です。その他、アメリカ・ボリビア・アルゼンチン・台湾からの輸入材が大半を占めるようになりました。桐材はどうしても人の手を入れて育てる木で、”昔より女の子が生まれたら、桐の木を植えよ。”の諺(ことわざ)があるくらい成長が早く、女の子が嫁に行く頃には、箪笥1棹を持たす事が出来る事を指します。

桐(キリ)について

ステッキとしての桐(きり)

桐は何と言っても上品さ、軽さが売り物です。しかし、軽すぎる事が製作上折れる事が多く、難儀しました。大木の根元から飛び出している新芽の枝、徒長枝(とちようし)を中心に3cm丸の材を曲げ加工しましたが、失敗の連続です。写真①の材を利用して再チャレンジをします。

桐材では珍しい細かいチリメン杢を持つ材

写真①:桐材では珍しい細かいチリメン杢を持つ材

今後ラカッポでは、この材(写真①)を用いてステッキ剤を取材しようと思っています。なかなか桐材では取れない細かいチリメン杢があります。

旧江戸川工場で、福島産会津桐を挽いている所(木挽は林以一氏)

写真②:旧江戸川工場で、福島産会津桐を挽いている所(木挽は林以一氏)

旧江戸川工場で、福島産会津桐を挽いている所

写真③:旧江戸川工場で、福島産会津桐を挽いている所

写真②③は、旧江戸川工場で、福島産会津桐を挽いている所です(木挽は林以一氏)。

本場福島県会津の栽培農家で持っている桐丸太第一枝まで6m70cmの樹齢230年物の桐

写真④:本場福島県会津の栽培農家で持っている桐丸太第一枝まで6m70cmの樹齢230年物の桐

写真④は、本場、福島県会津の栽培農家で持っている桐丸太第一枝まで6m・径70cmの樹齢230年という物です。もう日本産の桐では、ここまでの物は今ではありません。

需要を持つ建築用としての会津桐盤類

写真⑤:需要を持つ建築用としての会津桐盤類

需要を持つ建築用としての会津桐盤類

写真⑥:需要を持つ建築用としての会津桐盤類

桐は必ず丸太の状態で、1~2年雨に打たせアク抜きをします。挽いた後、末・元(すえ・もと)を逆にして、逆さに立て掛けます。⑤⑥は需要を持つ建築用としての会津桐盤類です。

桐がとても好きな施主との出会い

床柱・落掛・造作材すべて桐材を使用した床ノ間

写真⑦:床柱・落掛・造作材すべて桐材を使用した床ノ間

天井板も無垢挽きし、紅茶汚し(こうちゃよごし)を施し渋さを演出

天井板も無垢挽きし、紅茶汚し(こうちゃよごし)を施し渋さを演出

写真⑦は、床柱・落掛・造作材すべて桐材を使用した床ノ間です。

写真⑧は、天井板も無垢挽きし、紅茶汚し(こうちゃよごし)を施し渋さを演出しています。この形式は、京都銀閣寺・東求堂(とうぐうどう)内、同仁斎(どうじんさいの部屋)を取り入れた部屋です。

桐尽くしの部屋、まして無垢使用は今後無理な建築です。

桐材の特殊な使われ方

木挽が用いる大鋸(オガ)の柄(元・持ち手)は、長時間挽く時には、手の当りに良く疲れを防ぐ為、桐の柄に差し替えるそうです。又指物師の方などは、刃物道具の柄にも同じように桐の柄を用います。

日本人と桐の関り

桐と言えば頭に浮かぶのは、桐の”紋”です。桐の紋柄は、古くからデザインが数多く残っており、家紋等で有名なのが五三桐(ごさんぎり)・五七桐(ごひちぎり)で、豊臣家の家紋としても有名ですが、もともとは菊紋と同じ皇室専用の紋章でもあります。

五三桐(ごさんぎり)

五三桐(ごさんぎり)

五七桐(ごひちぎり)

五七桐(ごひちぎり)

気高さ、威厳や吉兆の印として勲章(桐花大綬章)の柄に用いられたり、日本政府等の公式ロゴや賞状等にも使われます。地方の方は、桐の木を見る機会が多いと思いますが、都会ではあまり目にする事が無いので、最近私が撮影した桐の花実をご紹介いたします。

桐の花実

桐の花実

桐の花実

桐の花実

実は夏過ぎに結実し、冬と共に散実します。

桐紋には、日本人の傑出したデフォルメ感性さに頭が下がりますね。

ステッキとしての桐材の結論

桐材は軽くて使い勝手の良さは事実ですが、”打”には非常に弱く、折れるケースが多く、大曲りステッキ加工は、無理と言って良いでしょう。遊び心に持つには、桐の大木の根元より吹芽枝・従長枝(ひこばえ)の皮付の小径木を散歩がてらに用いられる事をお奨めします。乾燥に伴い皮が剥がれる事が多いので、拭漆仕上を合わせてお奨めします。

よくある質問と回答

Q:桐にまつわる何かエピソードはありますか?
桐の琵琶棚板

写真⑨:桐の琵琶棚板

A:⑨の写真は””の時説明しましたが、桐の琵琶棚板です。巾90cm以上あり、少し玉杢目があった材です。巾が1m近くなかったので、床を少し縮めて無事納めた板です。今見ても当時、今も、もう納められない桐板です。納めたのは、在東京茶道の茶家の8帖茶室床脇琵琶棚板、柱はヤニ松正角床柱でした。

Q:桐材の扱いで苦労された経験はありますか?

A:建築材を納めていた時代、上記の琵琶棚板は、・桐も滅多に巾・長さがピッタリ寸法はありません。これ以上に泣いた事があります。それは埋樫(うめがし)です。素人の方はピンと来ないかも知れませんが、埋樫(うめがし)とは、障子・襖・雨戸の引き開き戸締り時”戸”が通る敷居の溝に埋める材の事を言います。

埋樫(うめがし)の名の通り、赤樫の目の通った材を入れるのですが、樫の10年も乾燥させた細い狂いの材を、当時在庫している所がありません。樫(かし)より上等なのが桐柾です。巾24mmで巾に対して柾目が最低5本は入った材で、なおかつ5m~6mと言ったら、無理の無理な木取りをしていて、泣く事、泣く事。一般の家庭ではビニール製のシキイスベリが入っている所です。昔より何千何百回の開閉には、桐材が一番摩擦熱に強かったそうです。泣きますね!!

◎仕事が出来る大工の持物で、打ち込む道具以外、手持ちが軽い桐の材が使われます。

桐(キリ)のご紹介は以上です。続いてキングウッドをご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキ専門店【ラカッポ】について

ラカッポは、おしゃれなステッキ製作を手がけ国内外のお客様からご好評を得ている東京新木場のステッキ専門店です。(有)東京数寄屋倶楽部によってプロデュースされています。ステッキのあらゆるオリジナルデザイン、意匠(銀細工・象牙彫刻・宝飾)に到るまでオーダーメイドによる製作を承ります。アンティークステッキ、思い出のステッキの手直しについても修理を承っております。

会社概要

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コンセプト

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購入前の知識

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