黄肌(きはだ)は、ミカン科の樹木で、日本ではミカン科に属するのは、ミカン・サンショウ・カラタチ・コクサギ・黄肌を含めて5種類です。北海道から本州に至るまで分布している落葉高木です。特に北海道に多く分布し、地方名で”しろこ”と俗に言われ、中国、朝鮮半島にも分布しています。この材は、昔から漢方薬として有名で、名前の由来の通り外皮を剥ぐと、色鮮やかな黄色の表皮が表れます。これは、ベルベリンという色素によるものと言われ、これを乾燥した物として有名な”正露丸”にも使われ、整腸薬として有名です。又染物の原料にも使われ、古くは東大寺正倉院に”黄紙”と呼ばれる古代紙も伝わっています。中国の漢方薬は、黄柏(おうぼく)と呼んでいます。

黄肌(きはだ)について

黄肌(きはだ)材の利用

建築の世界では主に内装材として、床ノ間廻り、床柱・落掛・床框を始め、棚板、地袋・書院の甲板類・玄関敷台で有名な古建築にも多く使われてきました。指物材としても上質杢目材も良く使われ、茶道具では桑の代用として、ヤシシブ液で染付調色された炉縁材等は、女桑(めぐわ)と呼んでいます。

桑(くわ)は、巾の広い大きな材が無いので、黄肌(きはだ)は、昔から代用材として使われてきましたが、現在上質杢目の有る大径材が枯渇しており、ステッキ用として使用に賞られる物が少ないのが現状です。同じ黄肌(きはだ)でも二通り有り、薄栗色の木は硬質で、黄色(モスグリーン)色の材は軟らかいと昔から言われています。

ステッキとしては、硬軟問わずまず大径材である事、杢目が有る材を一番に求めます。只単に黄肌(素杢)の物は使いません。大曲りステッキにしても、只の黄肌は、大曲り製品と扱っても1本50,000円です。3cm丸の中に玉杢(たまもく)を木取りで乗せ、玉が浮き上がる様な漆を施します。製材し、10年近く乾燥させると、モスグリーン色から神代(じんだい)の様な色彩になり、見間違える程の絵にも言えない雅味(がみ)が感じられる色彩に変化します。

黄肌の原木(げんぼく)

黄肌の原木(げんぼく)

厚いコルク状の鬼皮に包まれています。直径40cm~50cmの丸太サイズでは、ステッキに使われません。

大径材より挽材された黄肌材の玉杢目・縮緬杢目

写真A:大径材より挽材された黄肌材の玉杢目・縮緬杢目

黄肌材の玉杢・上杢の板材

写真B:黄肌材の玉杢・上杢の板材

写真Aは、大径材より挽材された黄肌材(①②)の玉杢目・縮緬杢目です。

写真Bは、黄肌材の玉杢・上杢の板材です。③は、大曲りステッキ用の33mm角材です。

写真C

写真C

写真Cは、手前より①②雅味(がみ)有る神代(じんだい)色のシャフト材です。③は、黒漆塗りを施した玉杢・上杢の大曲りステッキです。④は、普通杢の大曲りステッキです。⑤は、曲げる前の素材角です。

参考価格

  • 漆仕上り極上品:本35万円~本50万円
  • 素杢・普通杢:本5.5万円~本10万円

黄肌(きはだ)のご紹介は以上です。続いて桐(キリ)をご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

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