アレルセ（アレルシ）は、別名チリ杉、パタゴニアヒバ、新屋久杉と呼ばれています。樹高15m～30m・径40cm～60cmが現在平均アベレージです。かつては風倒木も含めて径1m～1.5m近い材もありました。チリでは、盛んにこの材の植林事業が行われていますが、この材に適した湖沼の周辺地などでは、気候の変化や土地の（地味が痩せていて）植林事業が上手く行っていない状況です。今日ワシントン条約（CITES・サイテス）では、絶滅危惧種として附属書Ⅰにブラジリアン・ローズウッドと共に挙げられている樹木です。

アレルセ（アレルシ）について

材はヒノキ属であり、色調は褐色の赤色を帯びた色彩で、中には黒い線状の縞を持つ材があり、樹齢1000年以上、3000年近く有る大径材は、柾目・杢目共に日本の屋久杉に匹敵するとも言われています。年輪の有る材は、セコイヤやレッドウッドに近い材とも言われています。

アレルセの用途

分布している地域は、年間降雨量が多く、海風も強く地味も痩せた土地に生育している為、年間生長は1mmにも満たないと言われています。年輪が積んでいて、節は一般には無いと言われ、柾目は通直でチリの国内では最高材と言われています。肌目は均一で加工性は良好です。屋久杉と生育環境が似ていますが、違う点は樹肥が少なく香りがほとんど無いくらいです。年輪は積んでいても屋久杉の様な”傷”は少ないです。チリ国内では早くから住宅建築材（屋根材・シエイク板）・外壁材（下見板）・窓枠・指物細工・樽（蜂蜜樽）・楽器・シガレットケース材、古くは船の帆柱、造船材にも使われたと言います。現在では考えられない様な使い方がされて来た感があります。もともと入手量が少ない為、当然輸出がありませんので、良き時代に輸入された材を求める以外ありません。

写真③は、アレルセの小口の断面です。紙を畳んだ様な年輪と縦に杢目の深さを物語る”杢足”が見られます。この材で厚み6cmで、年輪200年を数えます。

写真④の「A」は屋久杉と見違える様な杢目（鶉杢・雉子杢）です。「B」はステッキのシャフトに木取られた材です。「C」は屋久杉のステッキシャフトです。同じ樹齢から加工しても日本の屋久杉は、台風の影響もあり年輪3～5年剥くと傷が出易いです。

ステッキとしてのアレルセ材

年輪の細かい材「A」「B」を真直ぐに製材して、「C」の様にステッキシャフトを造ります。「D」の様にステッキのハンドル材も造ります。

ステッキの王道の大曲りは、制作は出来ませんがセパレートのステッキでハンドル・シャフト材を共木で誂えるか、ハンドルを異材で製作するか？シャフトは漆塗りが最適と思われます。この材を見ていると”光陰矢の如し”の言葉がピッタリです。材が有る内は、その貴重性に目が行かず、ワシントン条約で世界的に絶滅危惧種に指定されて初めて気付く事があります。ラカッポではステッキシャフト6本分しか御用意出来ません。貴重な材は”アッ”と言う間に無くなります。

アレルセの想い出

この材と初めて出会ったのは、40年近く前の昭和57年頃です。当時大阪銘木共同組合員の本田茂銘木店より、長さ2200×巾500×厚み240の盤を1丁80万円で購入しました。屋久杉と見比べても遜色なくすばらしい物です。傷は屋久杉の様に無く、全面鶉杢と言った感です。早速東京ツキ板工業で釜茹でし、スライサーでツキ板加工をしました。当時1分3.3mm、10枚突きで、約600枚が出来、傷も無くすばらしい物でした。べニアにツキ板を張り込み、天井用として販売し、当時坪12,000円、売上180万円となりました。ここ何十年もこの材は確かに見ていませんが、古い歴史有る銘木店で2～3丁の巾広のテーブル用材の盤を見ました。両サイドの正目はすばらしく真直で、なるほど楽器に向いていると思った次第です。

アレルセ（アレルシ）のご紹介は以上です。続いてイタヤ・カエデ（メープル）瘤（コブ）をご紹介いたします。

木族の会（樹種辞典）

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

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