楠(くす)

楠(くす)

日本では北海道を除く本州(関東以西)・四国・九州に分布する。クスノキ科(ニツケイ属)で、樹高は15~20m、直径70cm~1mの高木常緑・広葉樹です。特に九州は、気候的な事も有り、大径木・良材の産出が多いと言われています。全国の神社・鎮守の森の中に、御神木と称される楠が多く、大径木に至ると幹廻り4~7mを超す巨木もあり、その多くは天然記念樹の指定を受けています。

楠(くす)について

材の用途は、飛鳥時代より仏像製作に用いられ、建築材の内装(床ノ間板・床柱・棚板)に始まり、欄間(らんま)・建具・家具材・細工物・象嵌材などに広く使われます。仏具の”木魚”に”心地良い音色”である事から使われる事が多いです。楠と言えば楠脳油(材を蒸気・蒸留して取り出す)で、防虫済や香料としても使われます。

楠の原板に彫刻された欄間(らんま)”鶴の巣籠り”

写真①楠の原板に彫刻された欄間(らんま)”鶴の巣籠り”

ステッキとしての楠材

今までお客様で楠を指定した方はいません。ハンドル材には楠の面白い杢目があるコブ材は使用します。又、大曲りステッキ作成は出来ません。シャフト使いのセパレート型でも、シャフトが細い為、杢目の乗りや材の性質から折れる可能性が大でお奨めしません。

楠の杢目の面白い部分から取材されたステッキ・ハンドル

写真②楠の杢目の面白い部分から取材されたステッキ・ハンドル

楠の杢目の面白い部分から取材されたステッキ・ハンドル

写真③楠の杢目の面白い部分から取材されたステッキ・ハンドル

杢目の面白い部分からステッキ・ハンドルを取材します。

昭和40~50年代に台湾から輸入された楠の原木

写真④昭和40~50年代に台湾から輸入された楠の原木

写真④は、昭和40~50年代に台湾から輸入された楠の原木です。直径が1m50cmあります。日本産の楠より材質的には軟らかく、樟脳の香は強いです。写真上部皮を剥がした所に玉杢がビッチリ入った良材が多いです。現在は台湾からの輸入は一切ありません。

日本の国有林より出材された楠の原木

写真⑤日本の国有林より出材された楠の原木

写真⑤は日本の国有林より出材された楠の原木です。民有林等より直径が小さく、60cm内外が現在平均アベレージです。

よくある質問と回答

Q:楠材で何か面白い話はありませんか?

A:

  1. 楠はその香りでくすり・くさん・くさうが”クス”と呼ばれるようになったと言われています。
  2. 楠・樟の違いについでです。「章」は、楠の葉の形状・光沢から小刀の象形文字と同じ表し方とし、あざやかに目立つ、高く伸びると言う意味にも使われます。「南」は、同じ”クス”と読みますが、中国では南の地方、南国に育つ木との意味が有り、良く似た樹木のタブノキを指しているとも言われます。現在、幻の木となっている金糸楠木(きんしなんぼく)も香りが持つタブノキかもしれません。
  3. 日本書記第1巻に書かれている木の事柄です。素戔嗚尊(スサノオノミコト)は、日本の総神である天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟にあたる神で、日本の大地創世期、草の大地に自分の”あごひげ”を抜いて植えたのが”杉(すぎ)”、”かみのけ”を抜いて植えたのが”楠(クス)”、”むなげ”を抜いて植えたのが”桧(ひのき)”、”しりのけ”を抜いて植えたのが”槙(まき)”と書かれ、各材の使用処まで書かれています。桧は宮材に使い、槙は棺(はこざい)、楠・杉は宝船(舟材)にせよ・・・と。今日縄文時代の遺跡から、発掘材の舟の材は、楠・杉で日本書記に書かれている事に不思議に符合します。

楠(くす)のご紹介は以上です。続いて栗(くり)・チェスナットをご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

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