桜(さくら)の名の由来は、田植えの時季にやってくる田・畑の神様が宿る木「サ」、田・耕作の神「クラ」が、神が宿る場所を表す神座の意味で、サクラなどいくつかの由来や諸説があります。当て字で佐倉・佐蔵などの地名や、人名も多いです。料理屋さんは、”さ蔵”など、米を中心とした料理の意味を含んだ名前に。また、日本酒の銘柄や酒造メーカーにも”桜”の名が付くのも多い事に興味を引きます。

戦時中は、本居宜長の「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」軍の志気を鼓舞し、櫻の名の入った”同期の桜”を始め、歩兵の唄、磐梯の桜ばんだなど、軍歌も多い桜花の散り際を潔(いさぎ)のよさを重ねた武士道から来たと言われます。日本人と桜とは、歴史的に見ても切っても切れない深いつながりがあります。

桜(さくら)・樺(かば)・チェリー材について

日本の桜の種類

日本の桜は以下の3タイプがあります。

①ヤマザクラ【南方タイプ】

本州・宮城・新潟両県から以南・四国・九州

②オオヤマザクラ(エゾ・ヤマザクラ、ベニ・ヤマザクラ)【北方タイプ】

本州・中部以北(山口県には1部分布)・東北・北海道・千島・樺太)

③カスミサクラ、オクヤマサクラ【日本タイプ】

北海道・本州・四国・九州

  • カスミサクラ:平地や里木というより標高が高い。
  • オクヤマサクラ:深山に生育する奥山桜と言われる。

上記の他、ソメイヨシノを含む園芸種は約40種類あります。土地・土地の固有桜も20種類を数えます。

例としては、エドヒガンの園芸種(シダレザクラ)、オオシマザクラとエドヒガンの交配雑(ソメイヨシノ)。これらはバラ科サクラ属です。カンヒザクラ・ミヤマザクラなどの固有種もあります。

これらとは別に、カバノキ科の代表にカバ・シラカバ・ダテカンバ(岳樺)・オノオレカンバ(斧折れ樺)・ミズメ桜などが、桜材の代替品として、昔から利用されて来ました。

その他の桜材として、ヨーロッパダテカンバ、北アメリカからはブラックチェリー・シナノキ・アイアンウッドなども利用されています。

用途

北海道では建築構造材として、シュリザクラが多く使われています。戦後、家具・テーブル等、細かくは器、ツキ板・茶室や囲炉裏の炉縁などにも使われています。本桜の良材は、床柱、床脇廻り材に広く使われて来ました。桜の重厚な柾材は、寄木張りやフローリング材の最高位です。しかし全体量が桜は少なく、どうしてもシュリザクラ(主に北海道)や樺(カバ類)の出荷量が多く、現在では後者の樺系のフローリング材や外国産のチェリー材と称する材が大半を占めています。

北海道産の樺(カバ)材の良材丸太

写真①:北海道産の樺(カバ)材の良材丸太

写真①は、北海道産の樺(カバ)材の良材丸太です。桜系の赤系とは違いクリーム・ピンク色の柔かさを感じる材です。樺(カバ)は、バカに重ね通じると言われ、現代は樺桜(カバザクラ)と呼ばれる方が多いです。

本州産ミズメザクラ(水目桜)の柾目材

写真②:本州産ミズメザクラ(水目桜)の柾目材

写真②は、本州産ミズメザクラ(水目桜)の柾目材です。60cm径の丸太でも赤味が張った柾目の積んだ材は少ないです。

本州産ミズメザクラ(水目桜)と同じ柾材

写真③:写真②の本州産ミズメザクラ(水目桜)と同じ柾材

写真③は、写真②の本州産ミズメザクラ(水目桜)と同じ柾材です。赤味・白太でも両方の縮緬杢がよく現れた材で、ラカッポでは赤味柾より、白の柾材をステッキ材に使います。製品にすると、白材の方が気品があります。

様々な桜の大曲りステッキ

写真④:様々な桜の大曲りステッキ

写真④は、以下の通りとなります。

  • 「A」は、地桜(ヤマザクラ)の赤系の木を曲げ、更に赤系の調色を施した物
  • 「B」は、水目桜の白太で、チヂミ杢の入った素材を曲げた物(木地上り)
  • 「C」は、地桜(ヤマザクラ)の赤系の木を曲げた物(木地上り)
  • 「D」は、地桜(ヤマザクラ)の赤系の木を曲げ、拭き漆し仕上げをした物

火と樺(かば)の木

ウダイカンバと言うカバノキ科の系統の木があります。日本では岐阜県より北、青森県、北海道まで分布しています。漢字で書くと鵜松明樺”うたいまつかば”と読めますが、この漢字で”ウダイカンバ”と読みます。昔から松材を細く割った材と、この材の皮枝をクヌギ・スギなどと組み合わせ、松明(たいまつ)として鵜飼(鵜(う)鳥を使って夜川魚のアユを獲る)に使われたので、雨松明(うだいまつ)とも言われています。樺系統の木は、樹皮が薄く剥(は)げ、紙のようになるので、火起し材(ひおこしざい)として、山人の昔より、マタギ猟師や登山家がこの事を良く知っていました。また、雨・雪の中でも消え難い特性を持っています。

この材のおかけで、遭難を免れ(まぬがれ)た人達も多いと聞きます。マタギは”命の皮”と呼びます。日本では、松明(たいまつ)は地方により異なりますが、ヤニのある松根・クヌギ・スギの中心部に細い竹を芯に元で巻き込み、樺の皮も天候により一緒に入れ、鉄板の帯で止めた物を松明(たいまつ)と言います。長さ1mの物で、約1時間持つそうです。

樺燭(かしょく)の典(結婚式)と樺桜

大陸の中国では、樺の木類の灯火を樺燭(かしょく)と言い、途中消えないよう長く灯火を持たせる為、樺桜の皮に蝋(ろう)を塗り込み、燭火(しょくか)にした事から、結婚式の縁起として長く持たせるとして、樺燭の典の別名があります。樺桜は、昔からいろいろな物に使われてきた文化の歴史があります。樺(カバ)をバカにしてはいけませんね。

ステッキとしての桜(さくら)材

”木”としては最高の材と思いますが、地桜で赤系の地に黒の模様の入った材は、建築家も含めて人気があまりありません。今はライト系の白~クリーム色のフローリングが好まれます。桜も前述したように、日本人との関わりが深く、花開く文化もあります。現在日本国の国花でもあり、人により強い思い入れが多い木です。

また、花=木とのイメージ造りより、花自体に重きを置いて来たので、ヤマザクラなどの挽材を見せると、本当の桜木地の赤さに、皆さん驚かれます。ラカッポとしては、水目桜か樺桜の良材のできれば杢目が有り、仕上りの上品さの方が軍配は桜よりカバ系のサクラの方が上位と考えます。

サクラの大曲りステッキ

写真⑤:サクラの大曲りステッキ

写真⑤の材は、かつて日本領土であった千島(どの島かわかりません)から、戦前ミヤマザクラと言う木から取材された盤(バン)を北海道釧路の銘木店から分けて頂いた材から作られたサクラの大曲りステッキです(写真を拡大して杢目等見て下さい)。上品な市松模様の杢目です。

よくある質問と回答

Q:桜で何かエピソードはありますか?
かつて流行した建築内装材の部材(3cm丸の張合せ品)

写真⑥:かつて流行した建築内装材の部材(3cm丸の張合せ品)

写真⑥の2本は、かつて流行した建築内装材の部材(3cm丸の張合せ品)です。「A」「B」共、山の地桜の皮を剥がし、寸法使い勝手により円形の物にぐるりと貼った物です。

「A」は、皆さんが見る桜の皮肌です。業界では錆皮(さびかわ)と呼びます。「B」は、「A」の錆皮を刃物等で皮(薄皮1枚)を落とした物です。「C」は錆の一部を刃物で削った部分です。この工業製品でも虫害や皮が剥がれ落ちる事が多くありました。桜の無垢材使用、特に皮付材の使用は江戸時代より、難しい仕事です。秋田・角館桜皮細工・樺細工などがありますが、基本は張り合わせです。無垢材の場合は、よほど材を”こしらえる”と言いますが、その材でも皮が剥がれる桜の代名詞です。

かつて桜の皮が付いていたステッキ

写真⑥:かつて桜の皮が付いていたステッキ

特に茶室に使われる床柱使用は、台目柱も含めて作例は極端に少ないです。ですから、戦後の写真⑥の製品が多く造られました。無垢材使用は無理です。写真⑦の「A」は、かつて桜の皮が付いていたステッキだそうです。ラカッポに来た時は、ほとんど桜皮は剥がれ落ち、散散たる状況です。すべて皮跡を取り去り、漆仕上げをした時の写真です。

ラカッポでは、桜皮付無垢ステッキは製作していません。春なので桜の物語りに酩酊(めいてい)せず、材を見る冷静さが必要です。

桜(さくら)・樺(かば)・チェリーのご紹介は以上です。続いてサペリ(レッドサペリ)をご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

木族の会(樹種辞典)