ブライヤーとは、カフカス(コーカサス)・地中海沿岸が原産と言われ、ツツジ科、学名はエリカ・アルボレア、英名はツリーヒースです。日本に園芸種として昭和3年に輸入され、和名は栄樹(えいじゅ)と呼ばれています。この材の根瘤(ねこぶ・こんかい)をブライヤーと言います。ステッキにおいては、根コブよりステッキハンドルが製作されています。

ブライヤーについて

原産地

現在、南ヨーロッパ(スペイン、イタリア)、北アフリカ(リビア・アルジェリア・モロッコ)、地中海ではギリシャ(の島々)の地域に分布していて、この種の近似種は16種類と言われています。

各産地によるコブ形状は同じですが、割った肌合いは地域により色彩が異なります。写真はバレーボールサイズのブライヤーで、リビア産です。コブの大きさは、ソフトボール大から、バスケットボール以上の物(高齢樹・常緑低木)に根コブが存在します。

利用用途

この木のコブ利用は、何と言ってもパイプ(喫煙具)の製作には欠かせません。古くは粘土を素材利用していたパイプから、19世紀に火種の持ち具合、製品の木の肌合いの美しさから、ブライヤーパイプは、世界的に愛好者が多いと言われています。

ブライヤーコブ、挽き割った断面、ステッキハンドル・パイプ

写真①:ブライヤーコブ、写真②:挽き割った断面、写真③:ステッキハンドル・パイプ

イギリス紳士の帽子、ステッキ、パイプは正に代名詞といえます。銀幕のスター達の演ずる仕草にもパイプは欠かせません。シャーロックホームズから、あの独特のパイプを取り去ると絵になりませんね。

日本では何と言っても浅草柘製作所が有名です。ブライヤーパイプ作品は、今や世界的”ツゲブランド”として通用するぐらいです。この方は粋人で、パイプの事に関しては薀蓄(うんちく)ある方で、当然雑誌にも取り上げられ、本も出版されています。ブライヤーは、個人の趣味で喫煙具を手掛ける作家さんが日本には多くいると聞きます。またブライヤーは、車のギアレバー、ハンドルの一部や、高級カスタムカーにも使われているそうです。

ステッキ

ブライヤーコブ、挽き割った断面、ステッキハンドル・パイプ

ブライヤーコブ、挽き割った断面、ステッキハンドル・パイプ

ステッキ本体には、使用するサイズがまったくありませんので、製作できませんが、写真のようにセパレート型ステッキのハンドル材には特に杢目の美しさから向いた材です。

ブライヤーコブの出会いがあっても割れ等があり、ハンドル取りに向いた断面材は僅かで、難しいコブでもあります。

よくある質問と回答

Q:銘木業界におけるブライヤーの扱いについて教えていただけませんか?

A:銘木業界では、この材はまったく無縁なコブで、最近までブライヤー=バラの根と勘違いする人が多かったぐらいです。ステッキを始めるようになってから、銀座で有名な喫煙具店、佐々木商店の主人から、ブライヤー・エリカ等の写真と共に教えて頂いた経験があります。今でもこの店が販売する有名な”艶出し布巾(ふきん)”をステッキの御手入れ用にまとめて買っています。縁というのは面白く、主人からブライヤーの事をいろいろ聞くうちに、とうとうパイプを何点か買う羽目になった次第です。

縁は続きます。銀座シックスで”柘製作所”の社長さんともお知り合いになりました。更にそんな中、ブライヤーの塊を10個、埼玉の方から買って欲しいという話があり、写真のようなステッキハンドル材製作の挑戦になった訳です。

出来栄えは、赤系の杢目が重なりあった美しい材面です。パイプと同じように高級感が漂います。

Q:ブライヤーの材を扱う際に困った事はありませんか?

A:この木のコブは、地中海沿岸の非常に瘦せた砂礫層(されきそう)に根を下ろしているため、材中に虫穴、石、砂が噛んでいるケースが多くあります。

表面上からは、中に包み込まれているので判断が出来ず、結果10個中3個は、製材時中の石に鋸が当たり火花を上げました。日本に輸出する前に小石等を取り除き、釜で煮沸してから入荷する決まりですが、木は色々な事が起こります。鋸の修理代を請求され、勉強になりました。

話は変わりますが、かつて日本の梅(紅梅)の地中コブを挽いた事がありますが、ブライヤーと同等の美しい杢目でした。言い忘れましたが、小津安二郎監督の映画の中に登場する名優佐分利信のゴルフ場レストハウス内で、ブライヤーパイプを片手に持ちくつろぐシーンが有ります。箱根の湖畔でステッキを持ちながら談笑する仕草が参考になります。今見てもカッコ良いですよ。

ブライヤーのご紹介は以上です。続いてブラジリアン・ローズウッド(ジャカ・ランダ)をご紹介いたします。

木族の会(樹種辞典)

ステッキの材料となる様々な貴重な樹種についてご説明いたします。

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