夏が来ると思い出す。釣太公望・鯒(コチ)・平目(ヒラメ)
私事で申し訳ありませんが、20年程前まで釣りに凝っていました。特に根魚と言われるハゼ・マゴチ・カレイ・ヒラメが好きで、仕事を放って週2回程、東京湾・千葉房総・竹岡・大原・片貝・飯岡、遠くは大洗まで遠征していました。夏が近づくと特にマゴチはたまらない魅力があります。鯒(コチ)は似た種に、ワニゴチ、ネズミゴチがいて、メゴチと勘違いされますが、メゴチは屋形船で出される天ぷらのネタです。鯒はそのおいしさ、釣り時の魚との駆け引きに特に魅了されます。
ここでは釣り具等は割愛します。この魚を釣るには餌が大事で、活餌で車海老の子供サイズ”サイマキ”と呼ばれている活餌を使います。この釣りの面白さは、餌を海底から常に1.5メートル上の所に漂うように泳がせ、砂底に潜むマゴチを誘いサイマキと共に針に掛けさす釣りです。文書で書くと簡単に思いますが、マゴチは神経質で音に対して敏感で、例え餌のエビを吞み込んでいても、かすかな音にパッと口から吐き出してしまいます。一日8時間全神経を竿先に集め、餌に食い付いてから飲み込むまで釣竿からの前振れを手に感じ取りながらの遣り取りがこの魚の最大の魅力点です。
この釣りにはまった方は魚との駆け引き・読み・スリル・醍醐味は麻雀の読みにも似ていると絶賛し、誰でも一度経験すると病み付きになる程です。
鯒(コチ)の標準サイズは、40cm~50cm。大物になると60cm超えが飛び出します。東京湾では75cmが最大サイズと言われた魚拓が飾られています。
現在東京では、冬場フグを食する機会が多くありますが、フグは関西が本場とされます。鯒(コチ)は夏フグの異名があり、江戸時代から夏のさっぱりした食感をフグに例えます。
こんな歌句があります。
”照り鯒(コチ)や福久(フグ)より勝る洗いかな”
江戸時代、夏のさっぱりした味わいの鯒(コチ)は、冬のフグより勝っていると例えた句です。
もう一句あります。
”竿導き(引き)は平目三十、鯒(コチ)十五我慢かな”
竿先の前振れから大きく竿をしならせ、釣るまでのタイミングの時間を表した句です。
写真①の「A」は江戸時代より続く浅草稲荷町”東作本店”に別誹えした鯒竿(通称横浜竿)。「B」はこの話の中に出て来る鯒(コチ)・平目(ヒラメ)(象牙香合)
竿の糸巻杭も象牙で太公望の夢を乗せた”叶雲”が彫ってあります。
こんな道具組をした茶会や釣り仲間の夜咄(よばなし)も素敵ですね。
今では鯒・平目釣りも金属ルアー(疑似餌)全盛期時代。昔ながらの照り鯒を追う釣り1回でも入門すると病み付きになります。夏が来ると思い出します。興味ある方は横浜鶴見区釣船神明丸(しんみょうまる)、TEL:090-3519-1111を訪ねて下さい。
以下のページで、象牙美術工芸の数々をご紹介しておりますので合わせてご覧くださいませ。