依頼品は今では珍しい材、檳榔樹(びんろうじゅ)の大曲ステッキです。当り傷や外部の塗装が剥がれ落ちた部分が有り、一旦全て落とし、摺り漆を何回も重ねて仕上げました。檳榔樹(びんろうじゅ)は、元々日本本土には無く、南方の材でヤシ・シュロ・竹がミックスした材で、古く正倉院御物の中の作品にも使用されています。このステッキの元々の作者は、東京八王子で戦後のステッキ黎明期(れいめいき)に活躍した有名人の磯部氏です。野武士然としていて、ラカッポと比べて太造りとなっています。この方の作品は、ブルネイ国王にも愛されたと言います。
修理加工依頼のステッキ
材は本来茶系の繊維がはっきりしている材ですが、漆の持つ経年変化で飴色の素晴らしい色彩になります。
後日談①
現在良質の黒檀の再加工も依頼されています。依頼主はまだ30代初めの方で親戚の方が太平洋戦争中、ソロモン海戦に参加された戦後駆逐艦”菊月”の遺族会を運営されていたと言います。それで縁有って、南方産の樹木で出来たステッキをお持ちになっていた訳です。
更なる後日談②
依頼人の方は現在遺族会の幹事をなされています。いろいろな遺族会の方々と親しく交流があり、戦争中広島で沈んだ帝国海軍戦艦陸奥(むつ)の引き上げ品の鋼板を玉鋼(たまはがね)に混ぜて刀匠に打たせた日本刀を造られています。
形は海軍元帥刀を倣って造られていて、刀身には昭和天皇玉音放送時の”万世の為太平を開く”が彫られている見事な刀です。正に鎮魂の極みの作品となっていてステッキも含めて思いを大切にされている事に頭が下がります。
ご興味ある方は、戦艦陸奥の鉄から作られた太刀「青海波」のサイトをご確認下さい。
写真③は、漆職人も意を汲み入念に仕上った”檳榔樹(びんろうじゅ)”のステッキです。
無事納めさせて頂きました。
ステッキ修理のご依頼
ラカッポではステッキの修理を承っており、多くの実績がございます。ステッキの修理にお困りの方がいらっしゃれば、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせ下さいませ。いただいた情報を元に修理対応可否のご判断および、修理実施の際にはお見積りについてご返信させていただきます。
ステッキ専門店【ラカッポ】について
ラカッポは、おしゃれなステッキ製作を手がけ国内外のお客様からご好評を得ている東京新木場のステッキ専門店です。株式会社山安によってプロデュースされています。ステッキのあらゆるオリジナルデザイン、意匠(銀細工・象牙彫刻・宝飾)に到るまでオーダーメイドによる製作を承ります。アンティークステッキ、思い出のステッキの手直しについても修理を承っております。
お問合せ・ご来店予約
ステッキ専門店ラカッポは、お客様のご要望をお伺いさせていただきながらフルオーダーメイドでステッキを製作、販売させていただいております。ご来店の際は、事前にご来店予約をお願いいたします。また、ご不明な点などございましたらお気軽にお問合せくださいませ。みなさまのご利用、お待ちしておます。