シープホーンの材は、かつて印材として持て囃された時代が有り、特に女性に人気があります。戦前には琥珀色やベッコウ色に似た色彩が有り、象牙、水牛、シープホーンの順だったそうです。現在ラカッポにあるのは、写真①のクラブ型ハンドル象牙のスリットに嵌め込まれた作品です。戦後職人が削りを楽しんで作り上げた品です。手持ちは7個しかありません。シープホーンは、中国南西部・中央アジア・ヒマラヤ・東アジアモンゴル山地に生息する羊の角(つの)から取材した材として一般的に言われています。しかし、具体的にこの種だと説明を言える方は皆無です。その為、ラカッポでは、ステッキに関する事を知るべきであると、独自にシープホーンについて調べ上げましたので、皆様にご紹介をさせていただきます。

クラブ型ハンドル象牙のスリットに嵌め込まれたシープホーン材

写真①:クラブ型ハンドル象牙のスリットに嵌め込まれたシープホーン材

シープホーンとは?野生の山羊について

写真②は、色彩が最高のシープホーンの印材です。写真③は、シープホーンとして売られている素材です。シープホーンとは何か?を知る前に、家畜の始まりを知らなければなりません。今日、人の世界に居るペット家畜としては、まず犬がオオカミから家畜化されたのが、約2万年前、猫は9千年前、ヤギ・羊が9千年前、牛豚が同じく9千年前、馬は6千年前と言われています。これらの事実は、最近の遺伝子データからはっきりと分かって来た事であると言います。

色彩が最高のシープホーンの印材

写真②:色彩が最高のシープホーンの印材

シープホーンとして売られている素材

写真③:シープホーンとして売られている素材

人類と家畜の出会い

人類の発生は、アフリカとされ、その後北進を続け、シナイ半島でヨーロッパとアジア東方へと別れたと言います。人類の移動、定住が始まり、シリア中央アジア、イランで農耕が始まった頃から、現代私達が見る家畜が人間との生活を共にし始めた時期であると言います。ヤギ・羊類は、トルコ南部のトロス山脈・イラン南部のザクロス山脈の間に、遺伝子を持った野生種が今も生息しています。

ヤギ・羊の野生種分類

家畜化されたヤギ・羊の野生種としては、写真「A」です。この種と同じ種は、モンゴル・シベリア・アイベックスがあります。写真「B」は、ヤギの祖先とされ、西アジア・クレタ島に生息しています。写真「C」は、マルコール(マーゴル)と呼ばれ、ヒマラヤ山脈渓谷に広く生息している野生種です。

ビックホーン(アイベックス)、アメリカ・カナダ・メキシコの山間部に生息

写真A:ビックホーン(アイベックス)、アメリカ・カナダ・メキシコの山間部に生息

野生羊(ヤギの祖先、ベリアル山羊)

写真B:野生羊(ヤギの祖先、ベリアル山羊)

マルコール(マーコール)捻じれた角が特徴

写真C:マルコール(マーコール)捻じれた角が特徴

戦前輸入された物は、「A」「B」「C」の三種と考えられます。特にマルコールは、捻じれ角(バリーツイスト)が特徴です。特にマルコールは、羊毛を主体として飼われているアングラ・カシミアの祖先です。自然保護がまだやかましく網が掛かっていない時代、又経済発展途上国でも有り、これらの角が日本に入荷していたのも事実です。

現在では、写真「D」の最高級の毛皮が取れるメリノー種、写真「E」の古くから人に飼われていた羊であるドーゼットホーンが主流です。2種共、巻き角が特徴です。飼う場所(標高差)により、羊毛に向く、肉種に向く事が、2種と他種との交雑化が進んでいて、以前の様な色彩の良い材が取れなくなり、バラつきがオランダ水牛と同じく、顕著に現れています。

代表的な羊、メリノー

写真D:代表的な羊、メリノー

ドーゼットホーン

写真E:ドーゼットホーン

ステッキに使われる角(つの)材

ステッキに使われる牛・水牛の角とは一味違った神秘的な色彩と美しさを求めるのが無理になった事は、ステッキ製作を志している者に取って残念です。

何かの機会で、飴色で神秘性があり、深い味わいのある本物のシープホーンの大角材が手に入ったら、ハンドル材を製作したいと夢を見ております。18c~19cは、西欧の植民地から狩り等で得られた各種の角から、様々な意匠を盛り込んだ素晴らしいステッキが数多く製作されていました。現代では、シープホーンですら良材は無いと言われています。時代感を強く感じます。

西欧と日本の角材

西欧の植民地から狩り等で得られた各種の角は、アフリカスイギュウ・イランド・ホンゴ・ウォーターバック・オジロヌー・グランドガゼル等、種類を挙げたら切りがありません。それに加えてヨーロッパに生息するヘラジカ・ヨーロッパパイソンなど、ステッキの角(つの)を利用した様々な意匠を盛り込んだ素晴らしいステッキが数多く製作されていました。羨ましい限りです。引き換え、日本と言えば、エゾ鹿・日本鹿の角・猪の牙(無理が有ります)等、自然動物資源がほとんどありません。現代では、シープホーンですら良材は極端に無いと言われています。時代感を強く感じます。

牛羊・ヤギ科のニホンカモシカの角

写真④:牛羊・ヤギ科のニホンカモシカの角

写真④は牛羊・ヤギ科のニホンカモシカの角です。先が鋭利で、穴が深い為、ステッキのハンドルには無理です。それに天然記念物の動物です。

お話しにいろいろな資料を提供していただいた方をご紹介します。印鑑材は、この人に有りと言われている東大阪・小山交易社長、小山隆司氏です。

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ステッキ専門店【ラカッポ】について

ラカッポは、おしゃれなステッキ製作を手がけ国内外のお客様からご好評を得ている東京新木場のステッキ専門店です。株式会社山安によってプロデュースされています。ステッキのあらゆるオリジナルデザイン、意匠(銀細工・象牙彫刻・宝飾)に到るまでオーダーメイドによる製作を承ります。アンティークステッキ、思い出のステッキの手直しについても修理を承っております。

会社概要

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コンセプト

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